前立腺がんへの取り組み

PSAが高いと言われたことはありませんか

近年は、健康診断や人間ドックでPSA検査を受ける機会が増えてきています。前立腺がんに関係した検査らしいといったことは知っていても、PSAが高いと指摘されることが意味する内容を知らなければ検査結果を有効に役立てることができません。 PSAが高値でも前立腺がんではないケースもありますが、前立腺がんの早期発見につながることも多く、PSAは前立腺がんの可能性の有無を調べるスクリーニング検査として優れています。 PSA高値を指摘された場合、診断にはどんな検査が必要になり、可能性のある病気にどんなものがあるかを下記でご説明します。

前立腺がんとは

前立腺がんは年間10万人が新たに診断されており、罹患者数は増加傾向にあります。また、前立腺がんによる死亡数も年間1万人以上と報告されています。前立腺がんは、PSAという腫瘍マーカーによる早期発見が可能であり、PSA検査が普及している欧米では近年、前立腺がんによる死亡率が低下しています。前立腺がんは自覚症状に乏しく、進行してもほとんど症状を起こさないことも珍しくありません。早期発見のために、前立腺がんリスクが高くなる50歳を超えたら、特に症状がない場合もPSA検査を受けるようお勧めしています。

なお、PSAは前立腺がん以外でも、前立腺肥大症、前立腺炎などによって高値が出ることがありますので、こうした疾患の有無を調べ、がんが疑われる場合に精密検査が必要になります。当院では、精密検査が必要になった場合には連携している高度医療機関をご紹介し、スムーズに検査を受けていただけるようにしています。

PSAとは

PSAは、「Prostate-Specific Antigen」の頭文字をとっていて、日本語では「前立腺特異抗原」を意味します。前立腺特異抗原は、前立腺にしか存在しない物質であり、血液中にどのくらい含まれているかを調べることで、前立腺の異常を知ることができます。

前立腺がんの腫瘍マーカーであり、前立腺がんになった方の治療効果や再発の有無を調べる目的で使われていましたが、前立腺がんの早期発見につながるスクリーニング検査としても優れていることがわかり、その目的でも使われるようになってきています。

採血だけで行える心身への負担の少ない検査です。当院では採血したその日のうちに結果をお伝えできますので、前立腺がんのリスクが高くなる50歳を超えたら、定期的にPSA検査を受けることをお勧めしています。

PSAが高い方へ

泌尿器科で検査を受けた場合には、そのまま適切な検査や治療を受けられるため特に問題はありません。ただし、人間ドックや健康診断で受けた検査でPSA高値を指摘された場合には、できるだけ早く泌尿器科を受診してください。要精密検査とされた場合も、大病院に行く必要はなく、当院を受診いただければ対応可能です。当院では、時間を十分にとってわかりやすくご説明していますので、安心してなんでもご相談ください。

PSAの高い方へ(検査)

血液検査

PSAは前立腺に問題がない場合でも、外部からの刺激などによって一時的に上昇することがあります。ある程度期間を空けて再度検査を行うことで、一時的なものか、常に高いのかを判断することができます。当院では検査当日に結果がわかりますので、気軽に再検査を行って結果を比べることができます。


超音波検査

前立腺の大きさを調べることができます。超音波検査は痛みなどの不快感がなく、心身への負担がない検査です。前立腺の大きさによって、PSA値の妥当な数値は変わります。前立腺は加齢と共に肥大する傾向があり、年齢とともにこうした心身への負担の少ない検査を通じて定期的に検査することが重要になってきます。

なお、前立腺がんがある場合、前立腺の形状がいびつになることがあり、超音波検査では形のチェックも行います。


尿検査

膀胱炎など尿のトラブルがPSAに影響を与える場合がありますので、尿検査も併せて行います。

PSAが高い原因

PSAは、前立腺に含まれる物質であることから前立腺がん、前立腺肥大症、前立腺炎などがあると高い数値が出ます。

前立腺がんがあると、がん細胞が増殖する際に周囲の毛細血管を壊し、そこから前立腺の物質が血液中に溶け出してPSAが高値になります。前立腺肥大症では、前立腺が大きくなって血管の中に前立腺の組織液が漏れ、前立腺炎では炎症によって正常な組織が破壊されることで血液中に組織液が入り込み、それぞれPSAの数値が上がります。特に前立腺炎がある場合、PSAはかなり高い数値が出ることがあります。

PSAはこうした様々な前立腺の疾患を発見するきっかけになります。数値が高い場合、特に問題がないケースもありますが、前立腺がんの早期発見や、他の前立腺疾患の発見につながります。どんな病気でも言えることですが、早期発見し、適切な治療を行うことで治せる可能性は高まります。

PSA検査で高値を指摘されたら、専門医による適切な検査を受け、原因を確かめることが重要です。

PSAの高くなる疾患

前立腺がん

前立腺がんは、日本人男性のがん罹患率では上位を長年占めており、2018年の統計ではついに胃がんや大腸がんを抜いて男性のがん罹患数(がんと診断された患者数)が1位となりました。ただし、日本では前立腺がんによる死亡率は比較的低いとされています。また、進行が緩やかなため、経過観察は行い積極的な治療をしないケースもあります。

治療は、手術療法・放射線療法・内分泌療法(ホルモン療法)があり、手術や放射線治療は勃起不全や尿漏れなどQOL(生活の質)低下につながる可能性もありますので、慎重な検討が必要です。また、男性ホルモンを抑えるホルモン療法も高い効果が見込める場合がありますが、更年期のような症状が出ることがあり、その治療も重要になってきます。


前立腺肥大症

50歳以上の男性に多い疾患です。前立腺は膀胱の下にあり、尿道を取り囲むように存在しているため、頻尿や尿の勢いが低下するなど排尿に関する様々な症状を起こします。進行すると尿が全く出なくなる尿閉を起こすことがあり、その場合には早急に適切な処置が必要になります。症状がある場合は薬物療法を行い、必要があればレーザーなどを使った内視鏡による侵襲の少ない手術が行われることもあります。当院では、手術が必要な場合には連携する高度医療機関へご紹介させていただいています。

前立腺肥大症について


前立腺の炎症

急性と慢性に分けられ、慢性の前立腺炎でPSAの上昇は少ないですが、急性前立腺炎では大幅な上昇が生じることがあります。急性前立腺炎は、排尿痛や発熱などの症状を起こすことがあり、抗菌薬による治療が有効です。前立腺肥大症を合併している場合には、その治療も必要になります。

慢性前立腺炎の場合は、漢方薬による治療で効果が得られるケースがよくあります。

川崎市の検診について(前立腺検査)

川崎市では、川崎市こくほの検診(特定健康診査)にて、PSA検査を行っております。50~74歳の男性が対象となり、後期高齢者医療制度や社会保険等の方は検査対象外となります。また、川崎市国民健康保険以外の被保険者の方や生活保護受給者の方も検査対象外となります。対象となる方は、受診券が届きましたら、6~3月に1度、自己負担400円でお受けいただけますので、積極的に受診してください。なお、自己負担額に関しては、特定健診と同日実施の場合に限ります。

川崎市の検診について

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