前立腺肥大症

前立腺とは

前立腺とは泌尿器科では、腎臓・尿管・膀胱・尿道に加え、男性の前立腺や精巣などの生殖器も専門的に診療しています。前立腺は精子を守って栄養を与える前立腺液を分泌する生殖器で、膀胱の下、尿道を取り囲むように存在しています。前立腺は収縮することで射精時に精液を尿道へ送る機能を持つとともに、排尿などのコントロールにも関与しているとされています。
前立腺が肥大して周囲にある膀胱や尿道が圧迫され、頻尿や尿がうまく出せない(尿閉)、尿の勢いがなくなる(尿勢低下)といった排尿障害の症状を起こすのが前立腺肥大症です。50歳以上の男性、5人に1人が前立腺肥大症という報告もされており、加齢によってさらに発症率が増えていきます。

前立腺肥大症の原因

はっきりとした原因はわかっていませんが、加齢によって発症率が増加するので、男性ホルモンをはじめとした性ホルモンのバランス変化が関与していると考えられています。他のリスク要因には、高血圧・糖尿病・脂質異常症(高脂血症)や肥満、遺伝などが指摘されています。

前立腺肥大症の症状

正常な前立腺は形も大きさも栗の実と同じくらいですが、前立腺肥大症になると卵やミカンくらいのサイズになることもあります。前立腺の周囲にある膀胱や尿道が肥大した前立腺に圧迫されることで、排尿に関する様々な障害を起こします。

など

前立腺肥大症は適切な治療を受けないと進行して、さらに重度の排尿障害を起こすこともあります。また、尿路感染症や尿路結石のリスクが上昇し、深刻な腎機能障害につながってしまう可能性もあります。上記のような症状に気付いたら早めに当院までご相談ください。

前立腺肥大症の検査と診断

前立腺肥大症の症状は他の泌尿器疾患でもよくある症状です。正確な診断には、下記のような検査を行った上で総合的な判断が必要になります。

血液検査

血液検査主に前立腺腫瘍マーカーであるPSA(前立腺特異抗原)の血中濃度を確認します。PSAは前立腺がんの早期発見につながるスクリーニング検査として優れており、人間ドックなどでも行われることが増えてきています。


尿検査

尿を採取して成分を調べる検査です。主に排尿障害の原因となる疾患の有無を調べ、特定するために行います。


直腸診

直腸から隣接する前立腺の大きさ・形・硬さなどを確認し、痛みなどの有無を確かめる検査です。医師が肛門から指を入れて触診します。医療用の麻酔ゼリーをたっぷり使うので、痛みや不快感はほとんどありません。


超音波検査

前立腺の大きさを測定して肥大の程度を確かめます。また、排尿直後の膀胱を観察して残尿の有無や量を簡易的に把握するためにも行われます。

前立腺肥大症の治療

前立腺肥大の程度、症状、患者様のライフスタイルや年齢などによって異なりますが、中心となるのは薬物療法です。様々な薬があり、作用や効果があらわれるまでの期間などに違いがあり、患者様にきめ細かく合わせた処方が可能です。また、漢方薬や生薬などを併用することで効果がより期待できることもあります。

薬物療法

α1受容体遮断薬やPDE(ホスホジエステラーゼ)5阻害薬など

前立腺・膀胱・尿道の緊張を緩和させ、前立腺の筋肉を弛緩させて尿道への締めつけをゆるめます。比較的短期間で効果を実感しやすいとされています。


5α還元酵素阻害薬や抗アンドロゲン薬(抗男性ホルモン薬)など

男性ホルモンの作用を抑えて前立腺を小さくすることで、尿道への前立腺による圧迫を解消させます。種類によっては効果があらわれるまでに数か月服用を続ける必要のある薬もあります。


漢方薬・生薬(植物エキス製剤)

漢方薬・生薬(植物エキス製剤)前立腺の炎症を抑える効果が期待できる漢方薬や生薬の併用によって、症状の改善が期待できる場合もあります。

手術

前立腺の大きさ、症状、合併症などにより手術を検討することもあります。現在は内視鏡や尿道カテーテルを使った侵襲の少ない手術が増えてきています。侵襲の少ない手術でもリスクはありますので、しっかり薬物療法を受けて悪化させないことが重要です。なお、当院では手術が必要な患者様には連携する高度医療機関を紹介しております。

日常生活での注意事項

前立腺肥大症は日常生活に不便や支障を生じることが多い病気であり、QOL(生活の質)を保つためには発症や悪化を予防することが重要です。薬物療法など適切な治療を受け、日常生活を見直すことで、良好な状態を保てるようにしましょう。

  • 尿意があったら我慢せず、すぐにトイレへ行く
  • 便秘がある場合は解消する
  • 足腰を冷やさない
  • アルコール・カフェイン・刺激物を取り過ぎない
  • 長時間、座ったまま過ごさず、こまめに立って歩くようにする
  • 軽い運動を習慣付ける

など

市販薬について

風邪薬、胃腸薬など、一般的な市販薬には排尿障害の悪化につながる可能性のある成分が含まれているものがあります。市販薬は、医師や薬剤師に相談してから服用するようにしてください。

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