過活動膀胱

過活動膀胱とは

過活動膀胱とは膀胱内に尿がそれほど溜まっていないのに排尿筋が収縮し、突然尿意を生じて頻尿の症状を起こします。過度に膀胱が活動することで生じる病気であり、加齢や膀胱の知覚過敏、自律神経の乱れなど複数の原因が関与して発症すると考えられています。トイレに行ってもすぐまた行きたくなる、急に激しい尿意が起こる、急な激しい尿意でトイレまで間に合わずに漏れてしまうなどの症状を起こします。加齢と共に発症頻度が上がりますが、若い方の発症も珍しくありません。また、50歳以上では男性の発症が多くなるとされています。QOL(生活の質)を下げやすく、仕事や日常生活に支障を生じることも多いのですが、原因を見極め、治療を行うことで改善が見込める疾患です。骨盤底筋群のトレーニングや水分摂取の見直しなどで十分な効果を得られることもあります。年齢や体質のせいとあきらめてしまわず、お気軽にご相談ください。

過活動膀胱の症状

など

過活動膀胱の原因

膀胱に尿が溜まるとその情報が脳に伝わり、脳が排尿の指令を出し、それを受け取った骨盤底筋と括約筋が緩み、膀胱が収縮して尿を尿道に押し出して排尿します。過活動膀胱では、尿がまだあまり溜まっていない時に膀胱が不随意な収縮を起こして急激に強い尿意を起こします。
こうした不随意な収縮を起こす原因には、脳や脊髄の疾患、糖尿病や尿路感染症といった疾患、ホルモンの変化、膀胱がんや膀胱結石、前立腺肥大症、便秘、腹圧性尿失禁、尿量を増やす薬などがあります。他に疾患に関係しない原因として、カフェインやアルコール、残尿量の増加、膀胱の知覚過敏などによって生じることもあります。また女性は骨盤底筋群の筋力低下、男性は前立腺肥大症によって生じることも多く、様々な要因が複雑に絡み合って生じ、はっきりした原因がわからないこともあります。
重要なのは、早急に治療が必要な疾患が原因になっていないかをしっかり確かめることです。はっきりとした原因がわからない場合でも、当院では症状や年齢、お困りの内容、患者様のライフスタイルなどに合わせて適切な治療を組み合わせて症状の改善につなげています。

前立腺肥大症について

過活動膀胱の診断

重大な疾患が隠れていないかを確かめ、原因を見極めるために丁寧な問診を行います。その後、必要に応じて各種検査を行います。下記に一般的な診療の流れをご紹介します。

問診

問診症状のはじまった時期、症状の内容や変化、症状などについて丁寧に伺います。他の疾患の有無やその内容、服用している薬などについてもしっかり伺います。過活動膀胱症状質問票(Overactive Bladder Symptom Score;OABSS)という過活動膀胱のチェックシートは診断だけでなく、治療効果を確認するためにも行われることがあります。


排尿日誌

日々の飲水量や排尿状態を把握することは、過活動膀胱の原因を絞り込むために、そして治療効果を確認するためにも大きく役立ちます。初診時に記録をお願いし、再診時にお持ちいただいて確認します。


診察

男性の場合は前立腺疾患が疑われますので、直腸診を行います。女性の場合には、触診で骨盤の形状、圧痛の有無などを確認します。


尿検査

尿検査尿を採取して、尿潜血や炎症所見の有無を確かめます。尿潜血陽性の場合にはさらに詳しい検査が必要になります。
頻尿症状があり、尿潜血陽性の場合には、尿中に含まれる細胞を調べる尿細胞診検査を行って膀胱がんの有無を確かめます。


膀胱超音波検査

尿路結石や膀胱腫瘍の有無を調べるために行います。男性では前立腺の状態を把握するために、女性の場合は子宮と膀胱の位置関係などを確認するためにも役立ちます。

過活動膀胱の治療

過活動膀胱は、生活習慣の見直し、骨盤底筋群のトレーニングや膀胱訓練などの行動療法によって十分な改善が可能なケースも多くなっています。こうした治療では十分な改善効果を得られない場合には、薬物療法、ボトックス注射や神経刺激装置を植え込む手術などを行うこともあります。ボトックス注射や神経刺激装置を植え込む手術も保険適用されます。

生活習慣

塩分・カフェイン・アルコールの制限

塩分が多いものを控えることで過剰な水分摂取を抑え、症状緩和につなげます。カフェインやアルコールの制限も過活動膀胱の症状緩和に役立ちます。カフェインは、コーヒーや紅茶、緑茶、そしてエネジードリンクにも多く含まれているため注意してください。


減量

減量肥満になると腹部の脂肪によって腹圧が上昇し、腹圧性尿失禁のリスクが上昇します。肥満がある場合、減量によって過活動膀胱の症状が改善することが報告されています。


便秘の解消

便秘は腹圧を上昇させて腹圧性尿失禁のリスクを上昇させます。


過剰な水分摂取

過剰な水分摂取は、頻尿や過活動膀胱の要因になります。排尿日誌で飲水量が過剰と判断された場合には、適切な飲水量に制限することをお勧めします。

行動療法

骨盤底筋群のトレーニング

骨盤底筋群のトレーニング骨盤底の筋肉と尿括約筋の筋力をアップさせるトレーニングを行います。効果を実感できるまで時間はかかりますが、筋肉は何歳になっても鍛えることができますので、地道に毎日続けることが重要です。体操の他に、エクササイズやピラティスなどもあります。


膀胱訓練

膀胱訓練排尿したいという衝動をコントロールするための訓練です。いつでもトイレに行けるご自宅で排尿を我慢し、その時間を徐々に長くしていくことで膀胱の容量を増やします。残尿量が増えるリスクがありますので、定期的に検査を受ける必要があります。

薬物療法

薬物療法膀胱を弛緩させる薬は効果を見込めますが、副作用としてドライマウスやドライアイ、便秘を起こすことがあり、処方には注意が必要です。過活動膀胱に対しては、多くの薬があり、それぞれ効果や副作用の現れ方が異なります。定期的に残尿や排尿のチェックを行い、状態を確認しながら微調整して最適な処方にしていきます。

ボツリヌス毒素(ボトックスR)膀胱壁内注入療法

膀胱筋肉の20か所に少しずつ、小分けしてボトックスを注射することで膀胱の筋肉を適度に弛緩させる治療法です。半年以上効果が続き、効果が低下してきたら再度治療が可能です。尿路感染症や尿閉を起こす可能性があり、尿閉が起こった場合にはご自分でカテーテルを挿入する処置が必要になります。

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